BLDCモーター とその ESC(電子式スピードコントローラー)は、二つの異なる言語で仕様が書かれている。モーター側のページは KV、推力、ピーク電流で語り、ESC 側のページは連続電流、セル数、転流周波数で語る。ファームウェアやチューニングのせいにされる推進系の不具合の多くは、この二つの仕様書を突き合わせた時点で決まる。そして突き合わせは、モーター側が比較に足る情報を公開していて初めて成立する。本稿では、モーターと ESC のマッチングが現場でどう行われるかを示す。境界を越える三つの数値、極数が機械的回転数を電気的な回転数に変える仕組み、電流定格が実際にどこから来るのか、そして記録の揃ったモーターがドローン用モーターと ESC の組み合わせ全体を初飛行前に検証可能にする理由である。

簡潔な回答

ドローン用モーターと ESC は三つの数値で突き合わせる。KV 定格、選択したプロペラでモーターが引き出す電流、そしてパックが使うセル数である。KV にパック電圧を掛けると、コントローラーが転流すべき無負荷回転数が出る。その回転数に極対数を掛けると、コントローラーが追従すべき電気的な転流周波数が出る。電流値はコントローラーの定格を決め、セル数は受け入れなければならない電圧の上限を決める。基準は公称電圧ではなく満充電電圧である。

順序が重要である。プロペラと機体が推力の要求を決め、推力の要求がモーターを決め、モーターとパックが電流と電気的な回転数を決める。コントローラーは最後に、モーターとプロペラがすでに固定した数値から選ぶ。逆方向に組む、つまりコントローラーを先に選んでそれに耐えるモーターを探すやり方は、ほとんど必ず、熱限界近くで回るコントローラーか、購入時の推力以下に抑えられたモーターのどちらかに終わる。

素直な組み合わせと難しい組み合わせの実際の差は、たいてい資料の有無である。複数のスロットル位置での推力、持続時間を添えたピーク電流、極構成、リード線の線径が記載されたモーターのページなら、紙の上でコントローラーを選定するのに足りる。KV と質量しか書かれていないページを基にしたドローン用モーターと ESC の仕様は同じようには閉じられず、その差はテストベンチで埋め戻すしかない。

モーターが基準、ESC が制約

推進系では、モーターが電力を推力に変え、コントローラーがその変換をどれだけ速く正確に操れるかを決める。両者を対等に扱うと、コントローラー側が過剰でモーター側が不足するか、その逆のドローン用モーターと ESC の組み合わせになりやすい。モーターを基準、コントローラーを制約として扱えば、選定の順序は正しいまま保たれる。その順序こそ、ベンチで実際に回して生き残るあらゆるモーターと ESC のマッチングの土台である。

ESC が系の中で担うこと

ブラシレスコントローラーには切り替えを担うブラシがないため、回転磁界を自ら合成する。ロータ位置をホールセンサー、逆起電力、またはその両方から読み取り、ステータ磁界がロータより先行する順序で三相を切り替える。したがって電気的な一回転には一定数の転流ステップが含まれ、機械的な一回転にはロータの極対数と同じ数だけの電気的回転が含まれる。この単一の関係があるため、モーターの細部に見える極数が、ドローン用モーターと ESC の組に対する制約になる。

コントローラーは相電流のすべてを担う。大型のリフト用モーターを載せた 12S 機体では、その電流は数秒間にわたって 150 A を超えることがあり、スイッチ、シャント、銅のすべてがそれに耐えなければならない。ゆえにこのデバイスはタイミング素子であると同時にパワー素子であり、二つの役割は別々の限界を持つ。一方は電気的 RPM で表され、他方はアンペアと摂氏で表される。

モーター仕様を先に決める理由

推力こそ機体が実際に持つ要求である。ロータごとのホバー推力、上昇余裕、ロータ数が推力目標を決め、所定のプロペラ径とセル数における推力目標が、狭いモーターサイズの帯を示す。モーターが決まれば、その公開データが選択したプロペラでの電流と転流すべき回転数を決める。この順序で進めば、ドローン用モーターと ESC の仕様にある下流の数値すべてに出所がある。ベンチなしでマッチングを検証できる唯一の方法である。

境界を越える三つの数値

三つの量がモーター仕様からコントローラー仕様へ渡る。パック電圧を回転数に変える KV、コントローラーの定格を決めるプロペラの引き出し電流、機械的回転数を電気的な転流周波数に変える極数である。第四の数値である内部抵抗は、コントローラーの選定を直接決めはしないが、高電流時にパック電圧のどれだけが熱として失われ、したがって公称電圧のどれだけが回転数に回るかを予測する。紙の上では同一に見える二つのドローン用モーターと ESC の組み合わせを分けるのは、多くの場合この第四の数値である。

ドローン用モーターと ESC を結ぶ三つの数値:KV、ピーク電流、セル数

KV:ボルトあたりの回転数

KV は無負荷回転定数で、毎分回転数をボルトあたりで表したものである。KV160 と記されたモーターは、電圧を掛けるごとに約 160 rpm で回転する。12S パックの公称 44.4 V では、プロペラを付けない状態で約 7104 rpm に達する。この値は巻線の性質である。太い線を少ない巻数で巻けば KV は上がり、細い線を多い巻数で巻けば下がる。トルクを直接示すものではない。同じ KV の二つのモーターでも、質量、抵抗、連続トルクは大きく異なりうる。KV だけではドローン用モーターと ESC の選定の根拠として弱いのはそのためである。

コントローラーのマッチングにおいて、KV の役割は一つである。スロットル範囲の上端で転流すべき回転数を予測することだ。高い KV のモーターを少ないセル数で回す場合と、低い KV のモーターを多いセル数で回す場合は、逆方向から同じ機械的回転数に到達しうる。コントローラーから見れば電気的な周波数はどちらも同じである。

ピーク電流:スイッチが担うもの

電流を決めるのは負荷であり、モーターのラベルではない。ピーク 57 A と定格されたモーターがその電流を引き出すのは、プロペラがそれを生むトルクを要求するときだけである。すなわち全開スロットル、満充電のパック、指定のプロペラという条件である。同じモーターでも小さなプロペラなら電流は減り温度も下がる。大きなプロペラなら電流は増え、自身の公開範囲を超えることもある。実際のドローン用モーターと ESC の組み合わせを最も頻繁に決めるのがこの数値である。

したがって公開されたピーク電流は、それが測定されたプロペラとセル数、そして有効な時間窓とあわせて読まなければならない。180 s で示された値と 15 s で示された値は、熱的に異なる状況を表す。誤った窓に対して選定されたコントローラーは、過大か無防備のどちらかになる。

セル数:電圧の上限

パックは、コントローラーが遮断すべき電圧と、モーターが出そうとする回転数を決める。12S パックは公称 44.4 V だが満充電では 50.4 V であり、24S パックは公称 88.8 V、満充電で 100.8 V である。コントローラーは実際にかかる電圧に対して定格されるため、スロットル範囲の上端では満充電側の値が問題になる。パックの満充電電圧とコントローラー定格の間の余裕が、大きなプロペラを急減速したときの回生スパイクを吸収する。セル数が多いドローン用モーターと ESC のマッチングで初めて表面化する細部である。

モーター側が公開すべきもの

ドローン用モーターと ESC のマッチングは、二組の公開データを突き合わせて読む作業である。片側が薄いと比較は推測に落ち、150 A での推測は高くつく。モーターと ESC のマッチングでは四つの項目がほとんどの仕事を担い、いずれも資料の整った製品ページに現れる。

複数のスロットル位置での推力

推力の代表値が一つだけでは、あるプロペラで全開時にモーターが何を出せるかしか分からない。50 パーセント、75 パーセント、100 パーセントと刻む推力表なら、機体が実際に巡航するスロットルでその推力のどれだけが使えるか、各段がどれだけの電流を要するかが分かる。ホバーは全開であることはまれなので、飛行時間とコントローラーの発熱を決めるのは部分スロットルの行である。ドローン用モーターと ESC のマッチングもその行の上に組むべきである。

電流値の背後にある持続時間

時間窓のないピーク電流は不完全な数値である。150 A を 15 s 保持するモーターと 150 A を 180 s 保持するモーターは別の機械であり、その差は巻線とステータの熱容量である。窓はコントローラーの設計者に、バースト定格がどれだけ続く必要があるかも伝える。バースト値そのものより有用な入力である。

極構成とリード線の線径

極構成は、12N14P や 36N42P のようなスロット数と極数の組で書かれ、電気的な転流周波数と低速時の滑らかさを決める。リード線の線径は、過度な発熱なしにケーブルが運べる電流を決め、したがってコントローラーの定格が実際にモーターまで届くかどうかを決める。200 A 定格のコントローラーを 100 A 用のリード線でつなげば、ラベルが何であれ 100 A のシステムである。ドローン用モーターと ESC のマッチングが最も静かに目減りする経路の一つである。

内部抵抗とモーターに届く電圧

内部抵抗はページ上で最も小さな項目であり、最も情報量の多い項目の一つでもある。150 A では、40 mΩ の巻線が 6 V を落とす。44.4 V パックのかなりの割合であり、モーター内部で 900 W を熱として消費する。同じ KV、同じ推力の二つのモーターでも抵抗は大きく異なりうる。抵抗の低い側は負荷時に回転数を保ちやすく、同じ電流で温度も低い。電流範囲の上端でのドローン用モーターと ESC のマッチングでは、この一項目が代表値では説明できない差を説明することが多い。

AT と V の十一件の記録を一つの仕様群として読む

以下の記録は、T-Motor 十一機種の製造元ページから取ったもので、AT 固定翼系と V リフト系に分かれる。同じドローン用モーターと ESC の問題が三つの大きく異なる規模で現れるため、一つの組として示す。60 g のモーターを 4S で、350 g のモーターを 12S で、1680 g のモーターを 24S で回す三例である。この組の固定翼側については、機体側の選択を 固定翼モデル向けBLDCモータ:KV、プロペラ、巡航出力の整合 で扱っている。

モデルKVLiPo最大出力 (W)ピーク電流 (A)最大推力 (g)
T-Motor AT2312 KV1150 ドローン用モーター11502-4S35025 (180 s)1244
AT2317 KV8808802-4S35025 (180 s)1670
AT2321 KV9509502-4S45030 (180 s)1912
AT2820 KV8808803-4S70045 (180 s)2755
AT2826 KV9009003-4S82057 (180 s)3409
T-Motor AT4125 KV250 ドローン用モーター25012S220050 (180 s)7053
V804 KV17017012S5200115 (継続時間未公表)17358
V807 KV17017012S6800150 (継続時間未公表)20997
T-Motor V10 KV160 VTOLドローン用モーター16012S7000155 (継続時間未公表)27976
V10L KV17017012S9000196 (継続時間未公表)31798
T-Motor V13L KV65 VTOLドローン用モーター6524S6000190 (15 s)55454

出所:各モデルの製造元製品ページ。推力値はモデルについて示された最大値であり、製造元の試験で使用したプロペラに依存する。電流の後の括弧内の値は、そのピークが示される持続時間である。ページに持続時間の記載がない場合、括弧内は継続時間未公表と記す。V13L については、公開された出力値と公称 24S 電圧での公開電流値が整合しないため、本表では推力と電流のみに用い、試験条件の明確化を製造元に待つ。その行の公開出力値は推力対出力の比較には用いていない。

AT 固定翼の行

AT の行は 60 g から 350 g、2S から 12S に及ぶ。AT2312 から AT2321 は同じ 350-450 W の帯に 2-4S で収まり、推力が 1244 g から 1912 g へ進むのは主にステータ長によるもので、KV によるものではない。KV は三者の間で 1150、880、950 rpm/V と両方向に動く。AT2820 と AT2826 は同じ 12N14P の構成で 700 W、820 W まで 3-4S で引き上げる。AT4125 は 12S、2200 W に跳び、KV は 250 rpm/V まで下がる。パック電圧がはるかに高いため、巻線ははるかに低速である。

V リフトの行

V の行は同じ問題のリフト側である。V804 と V807 は KV170 と 12S を共有するが、ステータ容積が異なり、それが 5200 W 対 6800 W、推力 17358 g 対 20997 g として現れる。V10 と V10L は 36N42P の構成と 12S を共有し、大型の V10L は KV170 を KV160 に代え、7000 W から 9000 W へ移る。V13L は外れ値である。42N38P、KV65、24S、そして 55454 g の推力を 1680 g のモーターから得る。組として読むと、これらの行はステータ容積だけでドローン用モーターと ESC の仕様がどこまで動くかを示している。

十秒でできる照合

ピーク電流に公称パック電圧を掛けた値は、公開された最大出力に近くなるはずである。V10 では 155 A × 44.4 V で約 6882 W となり、公開値 7000 W に対する。V10L では 196 A × 44.4 V で約 8702 W、公開値は 9000 W。AT2826 では 57 A × 14.8 V で約 843 W、公開値は 820 W。完全には一致しない。値は試験曲線の異なる点から取られているためである。ただ、積が出力値から大きく離れる行は、モーターと ESC のマッチング判断でコントローラーの選定に使う前に確認すべき行である。

極数は RPM を転流周波数に変える

極ではなく極対

電気的な周波数は極対数に依存する。12N14P のモーターは磁石が 14 個、すなわち 7 極対であるため、機械的な一回転に七回の電気的回転が含まれる。36N42P のモーターは 21 極対、42N38P のモーターは 19 極対である。同じ機械的回転数に対し、この三つの構成は 7 対 21 対 19 の比で電気的な周波数をコントローラーに突きつける。ドローン用モーターと ESC の仕様でこれほど見落としやすいものはなく、リフト側での計算は VTOLドローン用モーター:ホバリング推力と巡航効率の両立 に示している。

24S での計算例

V13L は KV65 と 24S で記されている。公称 88.8 V では、KV に電圧を掛けてプロペラなしのシャフト回転数が約 5772 rpm となる。19 極対では、毎分およそ 109668 の電気的回転になる。同じ計算を V10 の KV160、12S で行うと機械的回転数は約 7104 rpm、21 極対では毎分およそ 149184 の電気的回転となる。低速に見える組み合わせのほうが高い電気的周波数になるのは、極数だけの理由である。

この数値に対してコントローラーが担うこと

電気的 RPM は、コントローラーがロータ位置を解像し位相を切り替えなければならない周波数である。コントローラーの公称転流限界と比較すべき数値であり、同程度の出力の低 KV モーターより高極数のリフト用モーターのほうが駆動しにくい理由を説明する数値でもある。上記の値は公開定数からの無負荷推定であり、上限である。プロペラ負荷がかかるとシャフトは減速し、電気的周波数もそれに伴って下がる。それでも範囲の上端で見積もるのは正しい習慣である。負荷が最も小さく周波数が最も高い瞬間、つまり満充電パックでのスロットル急開が、ドローン用モーターと ESC の組が同期を失いやすいときだからである。

電流の余裕:ESC の定格はどこから来るか

ドローン用モーター用の ESC は二つの組で定格される。無期限に保持できる連続値と、示された秒数の間だけ有効なバースト値である。モーターも同様の組を公開するが、多くの場合ピークと窓の形だけである。実用的な規則はこうである。連続定格はミッションの主要な状態、マルチロータならホバー、固定翼なら巡航でプロペラが引き出す電流を賄うこと。バースト定格は、モーターが主張する窓以上の時間にわたってモーターのピークを賄うこと。この規則の背後にある推力対余裕の計算は 高推力ドローン用モーターの選定:ペイロード、効率、熱裕度 に示している。

モーターのピークだけで選定するのは、逆方向のよくある誤りである。196 A のピークに合わせて買ったコントローラーは、ホバーで 60 A を引き、上昇で二秒だけピークに触れる機体に対して、質量もコストも倍になりうる。したがってドローン用モーターと ESC のマッチングは、各項目の最大値に合わせるのではなく、ミッションに合わせるものである。

ベンチと機体の差

製造元の推力と電流の値は、指定のプロペラ、安定した電源、自由な気流のもとベンチで測られる。機体の中では同じモーターが、より暖かい吸気、より理想から遠い電源、前進飛行で異なる形で負荷が抜けるプロペラに接する。したがって所定のスロットルでの電流は表からどちらの方向にもずれうる。スロットルを抑えた初飛行で電流を記録するほうが、丹念な紙の上の照合だけより価値があるのはそのためである。

電圧帯と ESC が受け入れるべきセル数

公称電圧と満充電電圧

12S パックは 44.4 V と呼ばれ、満充電では 50.4 V を示す。24S パックは 88.8 V と呼ばれ、100.8 V を示す。コントローラーは耐えなければならない電圧で定格され、その耐圧条件は満充電のパックに、減速時にプロペラが押し返す分を加えたものである。50 V 定格のコントローラーを 12S パックで使えば満充電時の余裕はない。60 V 定格なら余裕があり、その余裕は系の中で最も安い保険である。

記録に見る電圧帯

十一件の記録は三つの帯に分かれる。AT2312 から AT2321 の組は 2-4S で、4S パックの満充電 16.8 V に収まり、コントローラーの選択は小型で安価なクラスにとどまる。AT2820 と AT2826 はセルを一つ増やしても同じクラスにある。AT4125 と V リフトの四機種は 12S で、電圧余裕の面でコントローラーの選択が効き始め、100 A クラスの連続定格が普通になる領域である。V13L は 24S で、範囲の上端に単独で位置し、組の中で最も多いセル数と最も低い KV を持つ。公称と満充電の電圧差が最も大きく開く組み合わせを、一つのドローン用モーターと ESC の判断に持ち込むことになる。より広いトレードオフの電圧側は 長時間航続UAV向けのBLDCモーター:効率、質量、バス電圧 で扱っている。

パック電圧が選択ではなく既存の機体で固定されている場合、完成した推進セットのリフト側比較のほうが単機種の探索より速い。T-Motor VLシリーズ:16のVTOL推進セット、クアッドコプターMTOW 12 kgから150 kg。

電流を決めるのはプロペラ負荷であり、ラベルではない

同じ KV、異なるプロペラ

同じ KV、同じセル数の二つのモーターが、同じパックから大きく異なる電流を引き出すことがある。電流はプロペラが要求するトルクに従うためである。直径が大きい、あるいはピッチが高いプロペラは、どのスロットル位置でもモーターへの負荷が大きく、電流は推力より速く増える。10 in のプロペラで余裕に見えるモーターが 12 in では範囲外になりうる理由であり、プロペラがモーターと ESC のマッチングの後ではなく中に入る理由でもある。

アンペアあたりの推力で読む

同じ試験点での公開推力を持ち公開電流で割ると、候補を比べるための粗い効率指標になり、飛行時間を決める数値でもある。AT2312 はピーク点でアンペアあたり約 50 g、AT4125 はアンペアあたり約 141 g を返す。同じ条件どうしの比較ではない。両者は異なるプロペラ、曲線上の異なる点で測られている。ただ、同一系列・同一試験条件の中では、この指標は効率のよい組み合わせと、単に強力なだけの組み合わせを分ける。

プロペラから ESC までのマッチング手順

五つの段階をこの順に踏めば、ドローン用モーターと ESC のマッチングにある数値すべてを出所までたどれる。

第一段階:推力目標を定める。 ロータごとのホバー推力は、全備質量、ロータ数、ミッションが要求する推力対重量の余裕から決まる。上昇と風の余裕はここで加えるものであり、後回しにはしない。

第二段階:プロペラとセル数を選ぶ。 この二つが合わせて動作点を決める。低い KV で大きなプロペラ、高い KV で小さなプロペラは同じ推力に到達しうる。選択はディスク荷重とモーター質量のトレードオフである。

第三段階:巡航スロットルでの推力からモーターを選ぶ。 該当するのは、ミッションで機体が保持するスロットルの行であり、全開の代表値ではない。その行の電流も読むこと。コントローラーが飛行の大半を通して運ぶ電流だからである。

第四段階:モーターをコントローラー仕様に変換する。 KV にパックの満充電電圧を掛けて回転数の上限を、極対数を掛けて電気的な周波数を求め、ピーク電流をその窓とともに取る。この四つの数値が仕様のすべてである。

第五段階:三つの軸すべてに余裕を持つ ESC をドローン用モーター用に選ぶ。 連続電流はミッション電流を上回り、バースト電流は少なくとも示された窓にわたってモーターのピークを上回り、電圧定格は満充電のパック電圧を上回ること。リード線の線径とコネクターが、コントローラーが供給できる電流に合っていることを確認する。ここが食い違うと系は静かに目減りする。

ドローン用モーターと ESC の不整合が最初に現れる場所

高い電気的回転数での同期外れ

転流限界に近づいたときの最初の症状は、たいてい急なスロットル変化での同期外れである。モーターが失速し、コントローラーが停止し、機体の一角が落ちる。それが起きるのは負荷が最も小さく周波数が最も高い瞬間であり、電気的周波数の見積もりがまさに予測しようとしている条件である。タイミングの余裕が大きいコントローラー、あるいは同じ推力で極対数の少ないモーターは、どちらも余裕を正しい方向へ動かす。

スイッチの発熱

連続定格の近くで回るドローン用モーター用の ESC は、壊れる前に熱くなる。熱はスイッチとシャントに集中する。無風の中で連続定格の 80 パーセントでホバーを続けるのと、同じ電流を 25 km/h の気流の中で流すのとでは話が違う。熱余裕はドローン用モーターと ESC のマッチングの一部であり、後付けの改善ではない。

スロットル分解能と電圧降下

モーターに対して過大なコントローラーは、範囲の下側でほとんど何もせずに終わる。電流限界に近いパックは負荷時に電圧が下がり、モーターにかかる電圧、ひいては出る回転数が下がる。どちらの効果も、応答が最も重要な場面、つまり立て直しや突風のときに鈍く感じる機体として現れる。どちらもコントローラーだけを替えて解決するものではない。

記録の揃ったモーターがマッチングを検証可能にする理由

上の手順のどの段階も、公開された数値に依存している。モーターのページに、複数のスロットル位置での推力、窓を添えたピーク電流、極構成、リード線の線径が記載されていれば、コントローラー仕様は計算から導かれ、別の技術者がハードウェアに触れずに検証できる。それらの項目が欠けていれば、同じ判断をテストベンチから拾い直すしかない。150 A のテストベンチは仕様の安価な代替にはならない。

完全な推進データを公開する製造元から買うべき実務的な理由がここにある。代表的な KV と質量だけのページではない。公開された推力表は約束である。プロペラ、セル数、スロットル位置を明示し、再測定できる。示された窓を伴う公開ピーク電流は熱的な主張であり、機種間で比較できる。極数があればコントローラーを選ぶ前に電気的周波数を計算でき、リード線の線径があれば電流経路を端から端まで確認できる。どれも特殊な項目ではなく、本稿で用いた記録にはすべて現れている。モーターと ESC のマッチングが意見から監査になるのは、そのためである。

同じ論理はコントローラー側にも当てはまる。連続定格とバースト定格が試験条件とともに示されたコントローラーなら、同じ方法でモーターと突き合わせられる。双方が公開していれば、ドローン用モーターと ESC の組み合わせは意見の問題ではなくなり、成立するかしないかの計算になる。

主な要点

  • プロペラが推力を決め、推力がモーターを決め、モーターとパックがコントローラー仕様を決める。この順序であり、その順序がモーターと ESC のマッチングのすべてである。
  • KV に満充電のパック電圧を掛けると回転数の上限が、極対数を掛けるとコントローラーの限界と比較される電気的な転流周波数が出る。
  • ピーク電流は、持続時間と試験プロペラがあって初めて意味を持つ。15 s の値と 180 s の値は異なる熱的現実を表す。
  • コントローラーの電圧定格は、公称ではなく満充電のパック電圧と比較すべきである。
  • リード線の線径とコネクターの定格は電流予算の内側にある。200 A のコントローラーを 100 A のリード線の後ろに置けば、それは 100 A のシステムである。
  • 内部抵抗が低いほうが負荷時に回転数を保ち、同じ電流で温度も低い。範囲の上端で最も効く。
  • 記録の揃ったドローン用モーターと ESC のマッチングは初飛行前に紙の上で検証できる。記録のないものはベンチで拾い直すしかない。

よくある質問

Qドローン用モーター用の ESC に必要な電流定格はどれくらいか

ミッションの主要な状態を連続定格で賄えるだけ、そしてモーターのピークを少なくともモーターが主張する窓にわたってバースト定格で賄えるだけである。ホバーや巡航でプロペラが引き出す電流は連続値よりかなり低く、ピークは上昇と満充電のパックでしか現れない。モーターのピークだけで選定すると、ミッションが必要とするより重く高価なコントローラーになりやすい。

Q極数は ESC が追従すべき転流周波数をどう変えるか

機械的な一回転には、ロータの極対数と同じ数の電気的回転が含まれる。したがって電気的周波数はシャフト回転数に極対数を掛けたものである。42 極のロータは同じシャフト回転数で 14 極のロータの三倍の転流周波数を突きつける。コントローラーには位置を解像し位相を切り替えられる有限の周波数があり、電流と電圧に余裕があっても極数が多いとタイミング余裕が減るのはそのためである。

Q不整合が推力低下より先に発熱として現れる理由

プロペラが推力を出し続けているうちに、抵抗損とスイッチング損が電流とともに増えるためである。無風の中で連続定格の 80 パーセントで回るコントローラーは、同じ電流を 25 km/h の気流の中で流すより高温になる。熱はスイッチとシャントに集中する。推力が崩れるのはコントローラーが定格を落とすか同期を失ってからであり、その時点で熱余裕はすでに使い切られている。

QESC の電圧帯がモーターのセル数より狭いと何が起きるか

スロットルを開く前の満充電の時点で、コントローラーには定格を超える電圧がかかる。12S パックは 50.4 V に達し、24S パックは 100.8 V に達する。したがってそれらの値を下回る定格のコントローラーには、飛行開始時や大きなプロペラの減速時に耐圧の余裕がない。定格は公称電圧ではなく満充電電圧を上回るべきである。

Q電流定格を上げれば、そのプロペラ負荷に対して安全な組み合わせになるか

自動的にはならない。大きなコントローラーは質量とコストを増やし、転流限界や電圧余裕の問題を解決しない。買えるのはミッション電流での熱余裕であり、コントローラーへの気流が乏しい場所では意味を持つ。定格は、選択したプロペラとセル数での公開電流、およびその結果の回転数での電気的周波数に従うべきである。

Q公開された推力表はモーターと ESC のマッチングに何を加えるか

マッチングを前提ではなく検証可能なものにする。プロペラ、セル数、スロットル位置を明示した表なら、ミッションのスロットルでの電流を直接読み、ピークをその窓と照合できる。それがなければ同じ数値をテストベンチで拾い直すしかない。記録の揃った資料がモーターの選択からコントローラーの選択までの道を短くするのはそのためである。

公式資料

各記録の背後にある製造元ページには、推力と電流の値に用いたプロペラとセル数を含む試験条件がすべて記載されている。AT シリーズと V シリーズについては、それらのページが比較表のすべての数値の一次情報であり、最終的なコントローラーの選択を固める前に参照すべきである。

固定翼機と VTOL 機体向けのドローン用モーターを探す

上で引用した個々の記録は 製品選定 に一覧され、対応する機体カテゴリー、固定翼モデル などと並んでいる。同じ電流についてモーターのページとコントローラーのページが食い違う場合、まず比べるべきは各数値の背後にあるプロペラとセル数である。